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【映画】シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 ネタバレ多量

 感想と言うにはあまりにも稚拙な、視聴後に残された感情の整理に近い文章です。

 きっと僕はどこかで『旧劇』の感動を待ちわびていたんだと思います。

 

 

0.『序・破・Q』を最近初めて観た

 僕の『エヴァ』と始まりは小学生の頃にキッズステーションで視聴したのがきっかけでした。大人ばっか出るし難しいしグロいしわけのわからない最悪の作品。という印象を抱いたのを覚えています。

 その後、父親のプレイしていた『スパロボ』で存在を確認し、気づいたらTVシリーズ+『旧劇』+『漫画版』にどっぷりハマりましたが、丁度始まっていた『新劇場版』にはなぜか全く観る気になりませんでした。そしてそれは、つい最近まで続いていました。

 「完結する前に観たら絶対に続きが気になるからあとに楽しみをとっておく」、だと思ってシンの公開までは待っていたのですが、満を持して『序』から観た時に感じたのは、「自分が『旧劇』までで満足しきっている、あまりにも完成されているシリーズの続編を待ち望んでいなかった」ということが理解できました。

 それでも視聴を続けると『破』の画面構成の美しさや『Q』の次にとんでもないことをやるぞ、といった期待が膨らみ、足取りを軽くして本日映画を観てきたわけです。

 

1.真摯に『エヴァンゲリヲン』を終わらせていた

 様々な表現を使い、全シリーズの総決算と言えるような映像が展開され続けていました。しかも『ナディア』や『トップ2』のオマージュといったファンが喜びまくる要素を多量に入れた上で味わうヴンダーの戦闘やアスカ&マリのタッグシーンはそれだけで「観に来てよかった!」と非常に心躍るもの。

 また、個人的にはシンジくんの鬱シーンがとても素晴らしい描写だったと感じます。あの一連のシーンはアスカのフラストレーション込みで渾身の映像でした。あれは完全に庵野監督の経験から来るものだったのでしょう。僕も身内が鬱になったことがあるからよく分かります。

 なにより、もの凄くわかりやすかったです。戦闘シーンのド派手さはもちろん、作中のSF要素に対しても、キャラクターの信念やそれに対する決着の付け方も、導線がはっきりとしていて噛み砕きやすく感じました。

 そして、キャラクターや視聴者を幸せにしようという意思が伝わってきたことに驚きました。本当に今回で終わらせるという、今まで着いてきてくれた人への感謝を綴った映像に思えてなりませんでした。トウジの第三村の生活や、リョウジくんの存在が特にそれを強く感じさせるものでした。

 「どうしてみんなこんなに優しくするんだよ!」という台詞の通り、映画全体から優しさを感じる映画でした。そしてそれは、真摯に終わらせるという行為に繋がっているのだと思います。

 僕が一番優しいと感じたのは、旧劇をオマージュした赤い砂浜に横たわるアスカのシーン。かつては首を締めるという選択肢しかなかったのに、新しく現れた「好きだった」と伝えるシーンは、監督なりの旧作へのアンサーなのでしょう。

 

2.僕はおそらく、僕が思っていた以上に『エヴァンゲリオン』が好きだった

 ここまでたくさん褒めましたが、鑑賞後の僕にあったのはどうしようもない虚無感や悲しみに近い感情でした。

 僕は『新劇場版』を追い続けた身ではないので、『エヴァ』が終わることに耐えられないのではなく、庵野監督を始めとしたスタッフや僕以外の視聴者と違って、自分がこれを受け入れられない事実がどうしようもなく悲しいのだと思います。

「イマジナリーではなく、リアリティで立ち直っていたんだったね」

 このセリフは、あまりにも突き刺さりました。

 ゲンドウもシンジも勝手に納得しないでほしい。僕はまだ立ち直っていない。僕を置いていかないでほしい。全員幸せになってくれない安心感が欲しかったのかもしれない。リョウジくんが出てきた時あまりのことに呆然としてしまいました。大人は好きだけじゃやっていけないんじゃないのかよミサトさん

 仲のいい友達が次々出世や結婚をしていくような、自分だけ取り残されている感覚は、正直寂しいものでした。

 

 庵野監督がこの年月で得たもの、観た景色が出力された結果があのラストであり、庵野監督の人生を重ねたからこその宇部新川駅だったのだと考えています。

 そう考えると『旧劇』で行った人類補完計画を否定し、拒絶されることがわかっていてもアスカと2人でその先を生きていくとても美しい終わり方ではなく、マリの手を取りチョーカーを外す終わり方を受け止められないのは、僕がこの作品を受け止めきれるだけの人生がまだ不足しているのだと感じました。

 アニメを観るのをやめて現実に立ち返れというのは『旧劇』の頃からのメッセージででした。それをわかりやすくもう一度、ある種の希望を持った形で伝えられたことに、勝手に救われなさを感じてしまっているのです。

 知識を得ることに喜びを覚え、他者との営みを苦手とし、傷つけられることに怯える僕はどこに行けばいいのでしょうか。

3.最後に

 色々書き連ねましたが面白かったです。新劇場版四部作で考えたら完成されきっていると思います。文章化することでかなり整理できました。2時間半があっという間に感じるくらい面白かったし、素晴らしいクオリティの作品でした。

 賛否両論の作品だと思っていますが、思った以上に絶賛の声が溢れているのはネタバレの配慮なのかみんな大人になったからなのか、それを理解できるのはいつになるのでしょう。